測量や点検、配送など産業分野への導入が加速するドローン。国が産業用途の活用を推進する動きもあり、「うちも使えないかな?」「業務改善につながるのでは?」と、興味を持つ方も多いのではないでしょうか。

とはいえ、産業用のドローンは一般に高性能で専用ソフトウェアの利用が必要なことも。この記事では、そんな産業用ドローンを活用するために必要な免許や資格の有無、取得にかかる費用や日数、スクールの探し方を解説します。

この記事は2022.01.26時点の情報です。

産業用ドローンの運用に、免許はいらない!? 必要なのは・・・

資格や免許が「”今は”不要」なのは、なぜ?

産業用ドローンも、そのほかのドローンも適用される法令は同じ。そもそも2021年時点では、ドローンに国家資格や運転免許証のような公的な免許証はありません。

しかし国は2020年末に、ドローン操縦に関する免許制度創設の方針を決定。

2021年時点では資格や免許は不要ですが、近いうちに免許制度が作られるほどに「ドローンは知識や技能、機体の管理が求められる製品」ということです。加えて、産業用ドローンは機能も多いため、通常のドローン以上の専門的な知識やより難易度の高い場面での操縦技術も必要となります。

免許制度や登録制度ができる?!最新情報のキャッチアップが大切

免許制度の創設のように、ドローンをめぐる法令は随時変更されます。

2022年6月20日からは、100g以上のドローン・ラジコン機などの「機体情報の国への登録」「機体への登録番号の表示」の義務化がスタート。2021年12月20日から事前登録の受付が開始しました。同時に、これまで200g以上とされていた航空法の規制対象も「100g以上」へと拡大されると報じられています。これは近年、小型でも性能が良くなったことによるものです。

このように航空法などのドローンに関わる法令は定期的に変更されるため、自ら情報を集め、期日までに対応していく必要があります。

参考(外部リンク):

産業用ドローンに求められるのは「専門性」

産業用ドローンは、専門性の高い業務に活用するもの。より過酷な環境での、安全かつ正確な操縦が求められます。飛行させる環境や目的によっては、航空法で定められる「承認が必要となる飛行の方法」が該当する場合も多くあります。

また、業務でのドローン使用ならほとんどの場合に、データの管理や共有、解析に必要なアプリやソフトウェアの知識も必須。海外製品で日本語未対応のものも多い中、それらの使用方法についても理解する必要があります。

ほとんどのスクールで提供しているのは、ドローンの基本的な操作を学ぶもの。2021年時点で法律上は免許や資格が必須でないものの、業務のためにドローンを使うなら目的や受講者のレベルに合った専門性の高いコースを受講し、それにより取得できる民間資格を持つことが一般的です。

産業用ドローンは、申請時に工夫が必要な場合も

国の定める「無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法」
国の定める「無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法」
出典:無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法/国土交通省 

産業用ドローンのほとんどは、規制対象

産業用ドローンは200gを超えるものがほとんどなので、航空法の規制対象。そしてほとんどの飛行が、許可が必要な「空域」や承認が必要な「飛行の方法」に該当するため、申請が必要です。

標準マニュアルには種類がある!産業利用なら「インフラ点検」用を

申請は、許可・承認を受けて飛行させる際に必要な手順等を記載する「マニュアル」の提出が必要。国土交通省はそのまま使用できる「標準マニュアル」を複数用意しています。ただ、この「標準マニュアル」の種類によっては、飛行できない場所や条件がある場合も。

そのため、まずは業務に合わせた「標準マニュアル」を選ぶことが大切です。マニュアルの内容を確認、理解した上で選び、申請しましょう。

「インフラ点検」の標準マニュアルは、産業用途でのドローン運用の実態により合わせた内容です。点検など産業用途の申請には、内容をよく確認した上でこちらの利用を検討すると良いでしょう。

しかし、飛行の内容次第ではいずれの「標準マニュアル」でもなく、独自のマニュアルの作成を検討する必要も。不安な場合には、ドローンに詳しい行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考(外部リンク):無人航空機の飛行許可承認手続/国土交通省

補足:「マニュアル」とは

マニュアルは、”航空法に基づく許可及び承認を受けて、無人航空機を飛行させる際”に必要となる手順等を記載するもの。航空局への申請に必要なもので、「私はこうやってドローンを飛ばします」という詳細な内容を記載し申請書とともに提出、審査してもらいます。

マニュアルに記載される手順等は安全な飛行の確保にも必要なもの。ドローンを運用する人はマニュアル記載の内容を守って安全に万全を期した運用をする必要があります。

参考(外部リンク):

「”産業用ドローン運用”の資格」取得にかかる費用と日数は?

パソコンの前で考える男性
出典:Wes HicksUnsplash

産業用ドローン資格の取得費用

一般に行われる講習は日時や場所や最低催行人数があらかじめ決められた上で、参加者ひとりあたりの費用が設定されています。これは認定証の発行や実技試験の実施などにおいて、講師がひとりずつ対応する必要があるためです。

企業など団体で受講する場合は、スクールと調整して個別に開催することが多くあります。この場合、参加者数が多いほどひとりあたりの費用が割安になる傾向があり、目安は1名あたり講習1日で5万円前後から10万円ほど。遠方での出張開催の場合は開催地の調整費用や場所代、許可取りが必要な場合には諸経費がかかる場合も。使用する機材が大型なものや特殊なものとなる場合には、より高額になるでしょう。

産業用途の場合、受講者のドローンに関する知識や技能の状況や利用目的などを詳細にヒアリングし、内容やテキストをカスタマイズする場合がほとんど。そのため企業団体向けの講習や資格の費用は、要見積もりとしているスクールも多くあります。まずはその分野の講習を実施するスクールへ相談すると良いでしょう。

※費用はスクールやコースにより異なります。

最短2日〜!ただし条件つき

産業用ドローン講習の所要日数は目的によっても異なりますが、スクールによっては短いもので2日間のコースから用意されています。

しかし所要日数は、受講者の人数や受講時点でのドローンそして当該業務についての知識、技能レベルによって異なります。そのため、実際には「最短」と表記される以上の日数がかかることも多くあるでしょう。初心者の場合や基礎から業務での活用方法まで学ぶ場合は、4〜5日以上が一般的です。

最近はオンライン形式や動画の活用などで基本的な知識を学習し、講師と対面して実施するのは実技講習に限定することで、より効率的に学べるものも多くあります。

ただ、あくまでスクールは入門的なもの。さまざまな現場に対応できる技術力や、より精度の高い業務の遂行、最新の法規制への対応などには、日々の技術の習得や学習が重要となります。

産業用ドローンのスクールは「航空局ホームページ掲載」が正解!

スクールまたはミーティングの風景
出典:Sarah PflugBurst

「航空局ホームページ掲載」スクールとは?

国土交通省航空局が行なっているもので、ドローンの操縦者に講習会の受講を促し、操縦技能の底上げを図ることを目的としています。”航空局ホームページ掲載スクール”とは、所定の要件を満たしていることが確認できた「無人航空機の操縦技能講習を行う民間講習団体」「講習団体を指導し管理する団体」を、国土交通省のHP内に掲載する制度です。

これは毎月更新され、日々新たな団体が増えています。

「航空局ホームページ掲載」スクールとその資格を選ぶべき理由

パソコンの横でノートに記入する左利きの男性
出典:pixabay

1.一定の要件を満たした管理者、教官と実績のあるスクールである

航空局ホームページに「講習団体」「管理する団体」として掲載されるには、所定の要件を満たした上で、航空局へ手続きを行う必要があります。

そもそも、産業用途のためのコース(技能認証)を用意するスクールはあまり多くありません。その中でも講習業務を長く行なっているスクールは、かなり限定されます。航空局ホームページに掲載されているスクールは以下の条件を満たしているので、一定以上の実績や管理体制であるため、信頼性が高いと言えるでしょう。

「講習団体」の要件
  • 教官:飛行経歴50時間以上/教官任用教育を受け管理者が講習等を適切に実施できると認めた者
  • 組織運営:当該講習を1年以上実施、または100名以上の受講生への講習実績があり継続して運営できる能力を十分有すると認められること
「管理する団体」の要件
  • 管理者と管理補佐の配置
  • 管理者補佐:講習団体における教官以上の知見及び技能を有すること など
  • 講習団体への管理業務を1年以上または10団体以上行った実績があること
  • 講習団体に対し、年に1回以上の監査を行うこと

参考:航空局ホームページに掲載する無人航空機の操縦者に対する技能認証等を実施する団体等の確認手続について/航空局安全部運航安全課長

2.申請時の資料を省略できる

許可が必要な「空域」や、承認が必要な「飛行の方法」に該当する場合に必要な、国土交通省への申請。この際に、航空局ホームページ掲載のスクール発行する資格(技能証明書)を、添付すれば必要な書類の一部を省略することができます。

とはいえ、この省略は申請手続き全体で見るとそれほど大きなものではないため、主なメリットは1であり、こちらはおまけ程度と理解した方が良いでしょう。

「航空局ホームページ掲載」の探し方

パソコンとノートとペン
出典:pixabay

1.国土交通省HPへ

国土交通省HPの無人航空機の飛行許可承認手続」へアクセスします。

2.最新の一覧(pdfファイル)をダウンロード

ページ内「◆省略可能な申請書類」 の中にある「●飛行許可を受ける際の申請書類の一部を省略することができる講習団体等」の項目の「無人航空機の講習団体及び管理団体一覧」のpdfファイルを取得します。

参考(外部リンク):無人航空機の飛行許可承認手続/国土交通省 

3. 講習団体を探す

pdf内の「航空局ホームページに掲載されている無人航空機の操縦者に対する講習等を実施する団体」部分を確認。

「技能認証名」の列に「産業」や「専門分野に関連するキーワード」などを含む講習団体を検索します。講習内容などの詳細は団体のHPなどで確認します。

このほか、都道府県で検索してお近くのスクールを探すことなどもできます。

  • 「技能認証名」に関連キーワードを含まない場合もあります。

失敗しない!産業用ドローン運用のためのスクール選びの注意点

大型ドローンが飛行する様子
出典:pixabay

2021年12月時点でも、航空局ホームページ掲載のスクールは全国で1,200ほどあるため、選ぶのが大変!という方も多いでしょう。ここでは、そんなスクール選びで気をつけるべきポイントをご紹介します。

実績のあるスクールを選ぶ

アカデミックキャップ
出典:pixabay

最近できたスクールよりもすでに何千人、何万人という多くの卒業生を輩出しているスクールがおすすめです。たくさんの育成実績があるなら、ドローン操縦のプロというだけでなく「ドローンを教えること」のプロである講師が在籍しているでしょう。

インターネット上やまわりの人などから、受講生・卒業生の生の声も見聞きしやすいのもポイント。実績のあるスクールは、卒業生のコミュニティが存在する場合もあります。

このように、すでに実績のあるスクールならその実態を事前に知ることもできるため、より安心感して選ぶことができるでしょう。

全国展開する管理団体のプログラムを実施するスクールを選ぶ

地球儀上の日本
出典:pixabay

上で説明したように、ドローンスクールには「管理団体(管理する団体)」と「講習団体」があります。管理団体に管理される講習団体は、管理団体の作成したプログラムに従った講習を行い、技能認証を発行します。

管理団体の中には、全国にある100以上の講習団体を管理する大規模な団体がいくつかあります。このような管理団体は、より多くの操縦士を育成した実績があるため、作成するプログラムにもそのノウハウが還元されます。

その結果として、大きな管理団体に管理されたスクール(講習団体)の講習は、一定以上の質が担保されていると考えて良いでしょう。

屋外の技能実習のあるスクールを選ぶ

ドローン「Phantom 4 Pro」が飛行している様子
出典:pixabay

ドローンの飛行はGPSの入りにくい屋内でもむずかしいですが、突風など予期せぬ事態が発生しやすい屋外での飛行も難易度が高いものです。また操縦不能となった場合のリスクは、周囲を囲まれていない屋外の方が高い場合も。

スクールの中には、体育館など屋内での実技講習をセールスポイントにしているところもあります。冷暖房が完備されていたり、悪天候でも予定通り受講できるため通いやすく、ニーズがあるのも事実です。

しかし、実際の業務でドローンを使用する環境はどうでしょうか。雨風、暑さ寒さなどあらゆる環境下でも飛行させる場合があるのではないでしょうか。

ドローンの運用は、たとえばバッテリーやモニターなどアクセサリーの管理方法ひとつをとっても、環境によって異なります。あらゆる環境で安全な運用をするためにも、屋内だけでなく屋外での運用もしっかり指導してくれるスクールが、産業利用の場合には特におすすめです。

卒業後のサポートでスクールを選ぶ

手と手
出典:pixabay

スクール卒業後からが、ドローン運用のスタートです。数日間のスクールで学べることは限定的ですので、運用後に困ることもあるでしょう。そんなとき、あるとうれしいのがスクールの卒業後のサポート。スクールによって以下のようなものを用意している場合があります。

  • 練習場の貸し出し、利用料の割引
  • 新たに受講する受講料の割引
  • 会員制度やコミュニティへの参加
  • イベントへの参加
  • ドローン関連の業務の紹介

自身で練習場を用意できない場合には、練習場の「貸し出し」「利用料の割引」、業界情報のキャッチアップやコネクションを重視するなら「コミュニティ」「イベント」を重視するなど、利用したいサービスを提供しているかを事前に確認すると良いでしょう。

企業や団体などで受講する場合には、日常的な技術的サポートや、組織内におけるドローン運用の定着、拡大に向けたよりきめ細かなサポートが必要となる場合もありますよね。そのような場合には、ドローン導入の目的だけでなく「ドローン導入の具体的なビジョン」を添えて、事前に相談しておくと良いでしょう。

まとめ

産業用途での活用が日々進んでいるドローンですが、まだ実証実験段階の活用シーンが多いのが現状。しかし、国の方針もあり今後ますます発展していくことは確実といえます。

業務へのドローン導入は、基本の知識や技術だけでなく、より深い知識や豊富な操縦経験による高い技術が必要なことも。これらを身につけるのは、時間がかかるものです。導入に向けた勉強や練習は、ぜひ早めの開始を検討してみてくださいね。