この記事の目次
「ドローンの夜間飛行の規制」の内容〜対象や時間、罰則とは?〜
規制の内容と対象のドローン
ドローンは航空法(※1)において「日出から日没までの間において飛行させること」とされており、それ以外の時間帯=夜間の飛行は規制されています。この規制は以下のように、安全上の理由によるものです。
無人航空機の位置や姿勢だけでなく、周囲の障害物等の把握が困難になり、無人航空機の適切な制御ができず墜落等に至るおそれが高まること
出典:無人航空機に係る規制の運用における解釈について/航空局 次世代航空モビリティ企画室長
- 1:第9章 無人航空機 第132条の2 第1項第5号
規制対象のドローンの条件
夜間飛行に限らず航空法では、機体本体とバッテリーの重量の合計が200g以上の無人航空機が規制対象です。
- 200g未満の機体も「小型無人機等飛行禁止法」では規制対象ですが、こちらは夜間飛行を一律に規制する法律ではないため本記事では省略します。
- 2022年6月20日からの機体登録義務化に伴い、航空法の規制対象も200g以上から100g以上に拡大されると報じられています。
参考(外部リンク):
“夜間飛行”として規制される、場所と時間は?
場所
ドローンの夜間飛行は、航空法によって基本的にどの場所でも「禁止」。そのため、飛行させる場合には事前に国土交通省へ申請し、承認を得る必要があります。
ただし、屋内は航空法の規制対象外。承認を得なくとも、夜間飛行が可能です。四方をネットで囲まれたゴルフ練習場なども屋内とみなされるため、規制の対象外です。
時間
「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」によると、規制される時間である「日出から日没までの間」は、国立天文台の発表する情報を基準とします。
気をつけるべきは「地域」「標高」「季節」などに応じて異なるという点です。国立天文台によると、2022年の初日の出は比較的早い茨城県水戸市や千葉県千葉市が6:49。沖縄県の石垣島は7:27と、40分近くの差がありました。
標高による違いでいえば、島以外でもっとも初日の出が早いのは、富士山頂。日本一の標高だからですね。狭い範囲であっても、標高によって”夜間”にあたる時間が変わることは覚えておきましょう。
季節による違いも大きいため、各地でドローンを飛行させる方は都度、その地域の「日出」「日没」の時刻を確認するよう習慣づけましょう。標高が低い場所は、調べて出てくる代表地点よりも「日出」が遅かったり「日没」が早かったりすることも。このあたりも考慮して、飛行を計画することが大切です。
しかし、1年中いつでも、南東ほど日の出時刻が早くなるわけではありません。夏至の前後には、日の出はおおよそ北東の方向に行くほど早くなりますし、春分・秋分の頃には、東に行くほど日の出は早くなります。そのために、日の出をいちばん早く見られる場所の順番も、季節によって違ってくるというわけです。
参考(外部リンク):無人航空機に係る規制の運用における解釈について/航空局 次世代航空モビリティ企画室長
「日出」「日没」の調べ方
国立天文台暦計算室で調べる
前述のとおり「日出」「日没」の時間は、国立天文台の発表する情報を基準としています。そのため、それぞれの時刻は国立天文台HP内の「国立天文台 暦計算室」のページで調べます。
当日とその前後のデータ
画面左側「今日のこよみ」に「場所」と「日にち」を指定すれば、その場所の日の出や日の入の時刻が表示されます。
市区町村×特定日のデータ
都道府県単位ではなく、より詳細な場所を指定して調べることができます。
「こよみの計算(CGI版)」で年月日、都道府県、市区町村を指定し、「日の出入り・南中時」右の「GO」をクリック。
都道府県×年間のデータ
年間の一覧など、もっと先の日付を調べることもできます。
「各地のこよみ(表引版)」から、調べたい都道府県を選択。月を選べば、その月の日の出や日の入の時刻が一覧で表示されます。
アプリ
スマートフォンやタブレットで使用できるアプリにも、日の出・日の入の時刻をかんたんに確認できるものがあります。アプリならGPSを利用して現在地の情報が見られるなど、より手軽に利用できます。中には、日出・日没時刻だけでなく天気予報の機能を備えたものも。
以下でご紹介する以外にも、有料無料とわずたくさんのアプリがあるので、いくつか試してご自身が使いやすいものを見つけるのがおすすめです。
- いずれも外部リンク
Androidむけ無料アプリ
- 日の出・日の入簡易計算/hirohisa/Google Play
- Sunclock -日の出、日の入り、月/Henning Benecke/Google Play
- Sun Position & Sunrise デモ/Stonekick/Google Play
iPhoneむけ無料アプリ
- The Sun – 日の出日の入り時間/Vitalii Gryniuk/Apple Store
- 日の出日の入り/Peter Smith/Apple Store
- 日の出、日の入り/Oceano Inc./Apple Store
罰則
夜間飛行を規制する法律に違反した場合、航空法第157条の5に基づき50万円以下の罰金が課せられます。
参考(外部リンク):昭和二十七年法律第二百三十一号 航空法/e-GOV法令検索
正しく「夜間飛行させる方法」は?
前述のとおり、ドローンの夜間飛行は航空法によって禁止されています。夜間飛行させるには、国土交通省への申請が必要。次に、詳しい申請方法を解説していきます。
夜間飛行の申請のために知っておくべきこと
国土交通省の申請には、2つの書類を用意する
夜間飛行に限らず、国土交通省へのドローンの許可承認申請には「マニュアル」「申請書」の2点の書類を提出します。申請内容は「審査要領」をもとに審査されるため、まずはこの資料の「夜間飛行」に関する部分を確認すると良いでしょう。
申請書の作成は一見むずかしそうですが、具体的な申請書の記入方法は国土交通省HPにて「◆申請書記載例」として例を添えて説明されています。「無人航空機の飛行許可承認手続」のページ内には、いくつかのパターン別に記載例が掲載されていますので、参考にしてください。
マニュアルもまた、そのまま使用できる「標準マニュアル」が複数パターン用意されています。内容をよく読んだ上で、利用を検討すると良いでしょう。
次では、審査要領の要点などをご紹介します。
参考(外部リンク):
審査要領でわかる「夜間飛行」の実施にもとめられること
審査要領には「5.飛行形態に応じた追加基準」として、5-3の部分で夜間飛行を行う場合の基準が下記のように定められています。
(前略)
(1)機体について、無人航空機の姿勢及び方向が正確に視認できるよう灯火を有していること。ただし、無人航空機の飛行範囲が照明等で十分照らされている場合は、この限りでない。
(2)無人航空機を飛行させる者について、次に掲げる基準に適合すること。
・夜間、意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること。
・必要な能力を有していない場合には、無人航空機を飛行させる者又はその関係者の管理下にあって第三者が立ち入らないよう措置された場所において、夜間飛行の訓練を実施すること。(3)安全を確保するために必要な体制について、次に掲げる基準に適合すること。
出典:無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領/航空局長
・日中、飛行させようとする経路及びその周辺の障害物件等を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること。
・飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
・離着陸を予定している場所が照明の設置等により明確になっていること。
【要約】審査要領の夜間飛行の「追加基準」って、つまり何?
審査要領によると、夜間飛行は以下の条件を満たすことで可能になるということです。
- ドローンに、機体の向きを判別できるライトをつけること(飛行範囲が明るい場合は不要)
- “飛行高度と同じ距離の半径の範囲内”に、第三者が存在しない状況に限定すること
- 一定以上の飛行能力を有すること(有していない場合は管理者のもと、第三者のいない場所で訓練すること)
- 日中の間に経路や障害物を確認し、最適な飛行ルートを決めておくこと
- ドローンの特性を十分理解した補助者を配置すること
- 離着陸の場所は、十分な明るさを確保すること
また審査要領では「夜間における目視外飛行」の場合、飛行の経路を特定し記載することとされています。
夜間飛行のための「申請書」記入のポイント
夜間飛行に必要な条件を理解したら、記載例を参考に申請書を記入します。
「無人航空機」の追加基準への適合性
無人航空機の姿勢及び方向が正確に視認できるよう灯火を有していること。ただし、無人航空機の飛行範囲が照明等で十分照らされている場合はこの限りでない。
出典:無人航空機飛行マニュアル(DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下)場所を特定しない申請について適用 国土交通省航空局標準マニュアル②(令和3年 10 月1日版)/国土交通省
このように夜間飛行には「姿勢及び方向が正確に視認できるよう灯火を有していること」が求められています。この項目は、国土交通省HPに掲載のある「資料の一部を省略することができる無人航空機」の「確認した飛行形態の区分」に区分“D”が記載されていドローンの場合には、省略可能です。
市販される多くのドローンは、モーターの周辺などに前後の判別が可能な緑と赤などのライトを搭載しており、発売からまもなくここに掲載されます。そのため、この点は省略できることが多いでしょう。
無人航空機を「飛行させる者」の追加基準への適合性
(2)無人航空機を飛行させる者について、次に掲げる基準に適合すること。
出典:無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領/航空局長
・夜間、意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること。
・必要な能力を有していない場合には、無人航空機を飛行させる者又はその関係者の管理下にあって第三者が立ち入らないよう措置された場所において、夜間飛行の訓練を実施すること。
ここで記入するのは、操縦士のこれまでの飛行時間などの実績です。
しかし審査要領によると夜間飛行を行う操縦士は飛行時間以外に、一定の飛行の能力を有することや、有さない場合の訓練が求められています。以下では、審査要領で定められた基準や操縦訓練の内容について解説します。
飛行時間
夜間飛行の時間の明確な基準は、標準マニュアルにも審査要領にも記載はありません。総飛行時間は原則として、基本的な操縦技量だけでも10時間以上が求められています。(※)
- 総飛行時間:原則、10時間以上が必要。全ての飛行方法の飛行時間の合計。
- 夜間飛行時間:具体的な決まりなし。申請時は実際に夜間飛行させた時間数を記入。
- 2021年時点で国土交通省は「10時間の飛行経歴がなくても十分な飛行経験を有した監督者の下で飛行を行うこと等を条件として許可等を行うなど、安全性の確保を前提に柔軟な対応を実施している」と説明しているため、10時間の飛行経歴は必ずしも許可承認を得るために必須ではありません。
参考(外部リンク):飛行経歴が10時間に満たなくても認められた無人航空機の飛行の許可・承認の例/国土交通省
練習方法および練習場所
操縦練習は十分な経験を有する者の監督の下で、以下のように行うことが定められています。
夜間飛行の練習方法
- 対面飛行:左右方向の移動、前後方向の移動、水平面内での飛行を円滑に実施できるようにすること。
- 飛行の組合:操縦者から10m離れた地点で、水平飛行と上昇・下降を組み合わせて飛行を5回連続して安定して行うことができること。
- 8の字飛行:5回連続して安定して行うことができること。
夜間飛行の練習場所
訓練のために許可等を受けた場所又は屋内。
参考(外部リンク):無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領/航空局長
無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制
審査要領によると夜間飛行を行う場合は、日中のうちに周囲の障害物などを確認して適切な飛行ルートを特定する必要があります。また「補助者」の配置も求められます。
この補助者について審査要領では「無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者」と記載があります。さらに標準マニュアルでは補助者に対し「飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと」と記載があります。そのため、補助者は誰でも良いわけではなく、異常の発見や報告、操縦士への助言ができる人材を用意する必要があります。
参考(外部リンク):無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領/航空局長
夜間飛行のための「マニュアル」使用のポイント
先に述べたように申請に必要な「マニュアル」は国土交通省により、そのまま使用できる「標準マニュアル」が複数パターン用意されています。そのため、標準マニュアルの内容をよく読んだ上で、行おうとする飛行の内容と合致するのならば、これらをそのまま利用できます。
しかし標準マニュアルの利用には注意すべきことも。以下でご紹介します。
簡単だけど落とし穴あり!「標準マニュアル」の内容を確認
国土交通省が用意する「標準マニュアル」の「3-1 無人航空機を飛行させる際の基本的な体制」には、夜間飛行に関して以下2つの記述があります。
- 人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない。
- 夜間の目視外飛行は行わない。
さらに「3-3 夜間飛行を行う際の体制」では以下のように定められています。
・夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる灯火が装備された機体を使用し、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定する。
出典:無人航空機飛行マニュアル(DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下)場所を特定しない申請について適用 国土交通省航空局標準マニュアル②(令和3年 10 月1日版)/国土交通省
・飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者が存在しない状況でのみ飛行を実施する。
(後略)
このように、標準マニュアルの場合にはいくつかの条件下で夜間飛行ができないこととなっています。それらの条件下で夜間飛行させたい場合には、標準マニュアルではなく独自マニュアル(※)での申請を検討しなければなりません。
独自マニュアルってなに?どうやって作るの?
標準マニュアルで制限された条件で飛行したい場合に作成する、オリジナルのマニュアルです。申請者自らが作るほか、行政書士へ依頼し代理で作成する場合もあります。
申請が初めての人にとっては難易度が高い場合もあるので、ドローンに詳しい行政書士や国土交通省の用意する「無人航空機登録ヘルプデスク」へ相談すると良いでしょう。
独自マニュアル必須!標準マニュアルで飛行できない3つのパターン
ここでは、上でご紹介した標準マニュアルに記載されている3つの「夜間飛行できないパターン」を整理して詳しく解説します。これらの条件下で飛行させる場合には「独自マニュアル」を作成しての申請が必要となります。
1.「夜間飛行」×「人口集中地区」
標準マニュアルには下記のように定められています。
・人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない。
出典:無人航空機飛行マニュアル(DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下)場所を特定しない申請について適用 国土交通省航空局標準マニュアル②(令和3年 10 月1日版)/国土交通省
このように、標準マニュアルでは人口集中地区での夜間飛行はできません。「人口集中地区」と「夜間飛行」どちらも許可・承認を受けていたとしても、飛行させることはできません。
この組み合わせで飛行させたい場合は、「独自マニュアル」の作成が必要になります。
2.「夜間飛行」×「目視外飛行」
標準マニュアルには下記のように定められています。
・夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる灯火が装備された機体を使用し、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定する。
出典:無人航空機飛行マニュアル(DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下)場所を特定しない申請について適用 国土交通省航空局標準マニュアル②(令和3年 10 月1日版)/国土交通省
このように、標準マニュアルでは夜間の目視外飛行はできません。「目視外飛行」と「夜間飛行」どちらも許可・承認を受けていたとしても、飛行させることはできません。
この組み合わせで飛行させたい場合は、「独自マニュアル」の作成が必要になります。
3.飛行高度と同じ距離の半径の範囲内
標準マニュアルには下記のように定められています。
・飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者が存在しない状況でのみ飛行を実施す
出典:無人航空機飛行マニュアル(DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下)場所を特定しない申請について適用 国土交通省航空局標準マニュアル②(令和3年 10 月1日版)/国土交通省
る。
これはたとえば、ドローンを50mの高さまで飛行させた時に、ドローンの真下の地点を中心に半径50mの距離の範囲内に第三者が入ってはいけないということです。
「標準マニュアル」を使用した申請を行い住宅街で夜間飛行する場合には、範囲内で人が現れないように外出や通行の規制の必要性が出てきます。公的な業務での使用でもない限り、あまり現実的ではないでしょう。
そのため、人の出入りのある場所で夜間飛行をさせたい場合には「独自マニュアル」の作成が必要になると考えると良いでしょう。
まとめ
一見、標準マニュアルでの簡単な申請でも大丈夫そうな「夜間飛行」。でも実は、こまかな条件があることをご理解いただけたでしょうか。
夜間飛行を予定している場合はまず、どんな環境や条件で行いたいかを整理しましょう。その上で使用するマニュアルの選定や必要に応じた作成を行うなど、ひとつずつ丁寧に確認して申請を行うことが大切です。わからないことや不安な点があれば、ドローンに詳しい行政書士や国土交通省の用意する「無人航空機登録ヘルプデスク」へ相談すると良いでしょう。
法を守った安全な飛行を計画しましょうね。